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「ヴァイナル文學選書」第1弾「新宿歌舞伎町篇」 新宿の書店で朗読会も

石丸元章さんが手掛ける「聖パウラ」表紙。デザインは井上則人デザイン事務所、写真は永山竜弥さん

石丸元章さんが手掛ける「聖パウラ」表紙。デザインは井上則人デザイン事務所、写真は永山竜弥さん

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 複数の作家が、一つの街をテーマに書く掌編小説シリーズ「ヴァイナル文學選書」(東京キララ社)が始動し、10月に第1弾として「新宿歌舞伎町篇」が刊行された。12月13日には、紀伊國屋書店新宿本店(新宿区新宿3)9階イベントスペースで、著者を迎えて朗読会とトークショーが行われた。

菊地成孔さんによる「あたしを溺れさせて。そして溺れ死ぬあたしを見ていて」

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 発起人はライター、詩人などとして活動する石丸元章さん。ラインアップは石丸さんによる「聖パウラ」、小説家・ライター、海猫沢めろんさんの「鬼畜系ゲームブック熊猫」、ヒップホップMCとして活動する漢a.k.a. GAMIさんの「北新宿2055」、音楽家・文筆家の菊地成孔さんによる「あたしを溺れさせて。そして溺れ死ぬあたしを見ていて」の4冊。

 テーマと同様、作品の流通も「ある一つの街」に限定し、通販などを行わないのが特徴。同シリーズは、同店のほか、区内にある「ブックユニオン新宿店」「BERG」「鎖カフェ」「3rdroom」「模索舎」と、作品の朗読会が開催される会場のみで販売する。

 代表を務める中村保夫さんは、歌舞伎町を選んだきっかけについて、「この新たな試みの第1弾にふさわしい『街』を決める最初の企画会議で、制作スタッフ全員が何の迷いもなく『新宿』を選んだ」と振り返る。

 「新宿歌舞伎町は、世代や性別、職業、国籍にかかわらず全ての人を受け入れる寛容な『街』であるから、人それぞれ思い入れも強い。読者にとって感情移入しやすいという思いもあったし、今どき読者にわざわざ書店まで足を運んでもらう上での交通の便も最高だと思った」と中村さん。

 形状も従来のとじられた本と違い、とじないままのバラ刷りをヴァイナル(ビニール)によって密封した。中村さんは「読者からの反響は予想以上に多く、皆さん熱く語ってくれている。『新宿まで買いに行くところからすでにストーリーは始まっていて、封を開ける時にドキドキした』といった感想が最も多かった。買った帰りに、そのまま新宿のお気に入りの店でコーヒーやビールを飲みながら読んだという人も多かった」と話す。

 「『買いたいが新宿まで行けない』という地方の方などの声もよく聞いたが、東京の知人に頼んで買ってもらっているという話もよく耳にした。苦情というのは一件もなく、手に入れるまでの苦労も楽しみの一つだと思ってくれているのではないか」とも。
 同イベントには4作品の中から石丸さんと菊地さんが登壇した。「客席は超満員で、熱気にあふれていた。すでに買って読んで下さっているお客さまも、著者自らによる朗読にうっとりと聞き入っていた。かなり満足度の高いぜいたくな時間だったと喜んでいただけた」と中村さん。終了後にはサイン会も行った。

価格は各1,000円(税別)。

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