テアトル新宿(新宿区新宿3、TEL 03-3352-1846)などで4月7日、シンガーソングライターCoccoさんの初主演映画「KOTOKO」の上映が始まった。
塚本晋也監督がメガホンを取った同作品。Coccoさん演じる主人公の琴子は、幼い息子の大二郎を守ろうとするあまり、予測できない恐怖に満ちた毎日に心は安らぐ瞬間がなかった。そんなある日、田中と名乗る見知らぬ男性が琴子に声を掛けてくる。琴子の歌と歌う姿に魅了されたという田中と一緒に暮らし始める。琴子には世界が2つに見えていた。その生活の中で世界は一つになると思えたが…。愛する息子を守ろうとする余り、現実と虚構のバランスを崩していく女性の「慟哭(どうこく)と再生」をテーマに制作された。日本映画初の、第68回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門最高賞を受賞した。
3月27日にはテアトル新宿で特別先行上映会が行われ、上映後には塚本晋也監督が舞台あいさつを行った。「『KOTOKO』の脚本を作るときには、Coccoさんにインタビューをしたり言葉をもらった。Coccoさんには脚本に違和感がないか、意見をもらいながら進めていったので、現場が始まったときは、完全に琴子を自分の中で作り上げていた」とエピソードを語った。「映画の中で何曲か歌っていただいているが、僕はCoccoさんの歌の大ファンなので、映画のために曲を作ってもらったのは本当にありがたかった。歌を切りたくなかったので1カットで撮影した。音楽は、Coccoさんの手持ちの楽器で、Coccoさん自身によって作られたもの。Coccoさんのつぶやきや息づかいを映画の中になるべく生かしたかった」とも。
塚本監督は同作品に込めたメッセージについて、「僕の中にはだんだんと戦争状態が近づいてきているという恐怖があって、子どもの世代が戦争に行くような事態になってしまうのが一番怖いと感じている。Coccoさんの世界と、自分の中に浮かび上がってきた『戦争』という大きなテーマ、この2つが合わさったときに『これは今やらなくちゃいけない』と思った。震災前と後で脚本そのものは書き変えていないが、地震の後、お母さんたちが子どもを守ろうとする姿がエキセントリックなほど一生懸命で、その姿が僕の中で琴子に重なり、実感を込めてKOTOKOを描く事ができた。クランクインまで自宅で折り鶴を折っていたCoccoさんの強い後押しもあって撮影を開始することができた。大事な人を守るのがとても難しくなっていくと感じている人にぜひ見てもらいたい」と来場を呼び掛けた。