シベリア抑留者が日本の家族とやりとりしたはがきなどを展示する「言葉は海を超えて 収容所(ラーゲリ)と日本を結んだ葉書」が現在、新宿の「平和祈念展示資料館」(新宿区西新宿2)で開催されている。
佐藤健雄さんが収容所で描いた絵画「望郷」(佐藤さん遺族所蔵)
2000(平成12)年、兵士や戦後強制抑留者、海外からの引揚者に関する資料を展示する資料館として開館した。同館によると、独ソ戦(1941年~1945年)の終戦後、ソ連(現・ロシア)は満州(現・中国東北部)ほかに駐留していた日本人を労働力として利用するため収容所へ連行し、約60万人がシベリア抑留者となったという。
2期にわたる展示で、1期は「異国の丘にて(1946-1950)」と題し、1950(昭和25)年4月までに日本に帰還した「一般抑留者」が、ソ連の激しい検閲下で自身の安否を伝えた「俘虜(ふりょ)用郵便葉書」と呼ばれるはがきのほか、使っていたコートやブーツなどを展示する。
来年1月11日から始まる2期「残されし者たち(1952-1956)」は、1950年以降も引き続き抑留された「長期抑留者」にスポットを当てる。歌人で作家の故・辺見じゅんさんの「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」を原作に、12月9日に上映が始まった映画「ラーゲリより愛を込めて」の主人公のモデルとなった故・山本幡男さんと家族をつないだ郵便はがきを中心に、山本さんと同じ収容所にいた故・佐藤健雄さんが描いた絵画、最終引き揚げ船で帰還した長期抑留者の遺族が寄贈した収蔵品などを展示する。
館内では映画のワンシーンを紹介するパネルや、撮影に使った衣装、小道具などを展示する「映画『ラーゲリより愛を込めて』の世界」も開いている。同館学芸員の山口隆行さんは「映画の公開もあり、普段の企画展の来館者よりも若い人たちが多く来てくれている。往復はがきは抑留者1人当たりに支給される枚数が少なかったため、何十枚もまとめて見られる機会はあまりなく、今回の展示をきっかけに若い世代にもその存在を知ってもらえたのでは」と話す。
戦犯扱いを受け、極寒の地に半数近くが11年以上も抑留され続けた長期抑留者は2000人強しかおらず、1952(昭和27)年まで家族との連絡も禁じられ、資料は非常に少ないという。山口さんは「『郵便葉書』と呼ばれる家族とやりとりしたはがきや、日ソ国交回復後に帰還した約千人の長期抑留者だけに持ち帰りが許された、収容所で描いた絵画やソ連国内の土産物は特に貴重な1次資料なので、見てもらいたい」と話す。
開館時間は9時30分~17時30分。入館無料。月曜(祝日の場合は翌日)、12月28日~1月4日、2月5日休館。1期は来年1月9日、2期は4月23日まで。