東日本旅客鉄道とJR東日本スタートアップが、ベンチャー企業と協業して新たなサービスを実現する「JR東日本スタートアッププログラム2018」の発表会が11月29日、新宿のルミネゼロ(渋谷区千駄ヶ谷5)で行われ、「スタートアップ大賞」ほか各賞が選出された。今後順次、テストマーケティングも展開される。
同プログラムは、駅や、鉄道をはじめとした経営資源や情報資産を活用したビジネス・サービスの提案を募り、ブラッシュアップを経て実現していくもの。2017年に続き2回目となる今回は、新たに「地域」「海外」のテーマを加え、地域資源を活用した協業プランや、海外のベンチャー企業が日本に進出する足掛かりとなるような協業プランの募集を4月より開始した。
自社の製品、サービスやプロトタイプを有する10年以内の企業を対象とし、年度内にテストマーケティングを実施することを目指す「アクセラレーションコース」には、111件の提案があり、うち海外からの応募2件を含む18件を採択。これから起業、または起業間もない人を対象に、事業アイディアの採用や事業を具体化することを目指す「インキュベーションコース」の2コースには、71件の提案があり、5件を採択した。
「スタートアップ大賞」を受賞したのは「無線マルチホップ技術による屋外無線LAN環境構築」を掲げたPicoCELA(中央区)。従来設置が困難だった観光地にWi-Fi環境を構築し、そこから取得できる情報からインバウンドの行動傾向などを把握するもので、ガーラ湯沢や八甲田山ロープウェー山頂駅などで、今後来年3月末までにかけて実証実験を予定する。
広報担当者は「LANケーブル配線を大幅に削減することで、なかなか設置の難しかった雪山やスキー場、トンネル内といった場所でもWi-Fiの設置がスムーズにできるようになる。併せて情報収集能力も高いため、利用者から集めたビッグデータの活用にも期待が高まっている」と話す。
社長の古川浩さんは「研究を始めて20年弱で、いずれこういったシステムが必要になると信じて、山あり谷ありだった。大変栄誉な賞をいただき、感無量」と話した。
そのほか、「AIを活用した駅や新幹線の流動予測」でメトロエンジン(港区)が、「新幹線自動改札での手荷物検査装置」でANSeeN(静岡県)がそれぞれ最優秀賞を受賞。優秀賞と青森市長賞の受賞発表も行った。