老舗映画館「新宿スカラ1・2・3」(新宿区新宿3)が2月8日、閉館した。
同館のオープンは1973年。赤い絨毯と白熱灯の照明で「温かみと高級感」をもたせた劇場のような空間が特徴だった。同館副支配人の佐藤隆さんは「赤い絨毯は、開館当初からのもの。数年前、カーペットの取り替えを検討したところ、1本1本の毛が長いので、現在では海外の職人に特注しないと同じレベルのものは手に入らないと言われたため断念した」という。
最終上映後には、40代~50代の男性客がカメラや携帯電話で館内を撮影したり、「最後だから階段で」とエレベーターを使わずに映画館を後にする人の姿も。佐藤さんは、「オープン当時は、映画館は大人の社交場のような場所で、足を運ぶということが非日常で贅沢な体験だったのでは。人それぞれに大切な思い出がある場所だと思う。当館は東宝系の邦画と洋画の興行を行っていたので、日本の興行の歴史とともに歩んだ映画館だったことを改めて誇りに思う」と話していた。
最後の興行となったのは、「どろろ」(スカラ1)、「大奥」(スカラ2)、「愛の流刑地」(スカラ3)と、話題の邦画3作品。21時25分、最終興行となる「愛の流刑地」の上映が終わると、スカラ3の前には20代~30代の歴代アルバイトメンバーが集結。映画館との別れを惜しみ、最後の打ち上げを行う光景も見られた。
同館は、総合アミューズメントビルの賃貸借などを行う三和興行(新宿区新宿3)が自社物件(レインボービレッジB1階、3階、4階)内で3スクリーンを運営していたもの。シネマコンプレックス「新宿バルト9」のオープンやビルの老朽化が重なったことにより閉館を決めたという。同ビル建て替える予定。同社は今後、直営での映画館運営は行わない方針。