JR新宿駅東南口の映画館「K’s cinema(ケイズシネマ)」(新宿区新宿3、TEL 03-3352-2471)で9月17日より、かつて新宿に存在した大衆劇場「ムーランルージュ新宿座」の関係者に取材して作られた記録映画「ムーランルージュの青春」が公開される。
1931(昭和6)年~1951(昭和26)年の、戦前から戦後にかけて現在の新宿3丁目に存在した同劇場。浅草・玉木座の支配人、佐々木千里が芝居とレビューを提供する常設劇場を開館。レビューダンスのほか、風刺劇や叙情劇で学生やインテリ層の人気を集めた。本家パリの「ムーランルージュ」同様に、屋根に赤い風車を乗せ20年の歴史を刻んだ。同劇場からは有島一郎、望月優子、明日待子、森繁久弥、三崎千恵子、由利徹といった名優を輩出。「歌ありコントありトークありのバラエティー」という言葉も同劇場から誕生した。
映画の美術監督・中村公彦さんが原点でもある同劇場の記録を残そうと動き始めた矢先、中村さんが亡くなってしまう。同劇場を語れる人はもういないのではと、危ぶまれた時、中村さんに近く元劇場の女優・大空千尋さんに出会う。そこから一人ひとりパズルのように関係者がつながっていき、延べ20人分の貴重な証言が集まる。同劇場が閉館してから60年。中村さんと深い絆で結ばれていたスタッフが、貴重な資料や証言を元に中村さんの遺志を継ぎ記録映画を完成させた。
新宿区の中山弘子区長は「新宿区でその生を終えた歌人の斎藤茂吉は、『新宿のムーラン・ルージュのかたすみに ゆふまぐれ居て我は泣きけり』という歌を残している。昭和26年に他の娯楽との競争に敗れて閉館したが、多くの作家や俳優を世に送った。開館80年に当たる今年、当時のトップスター明日待子さんや関係者の証言、当時の写真、芝居の再現などによるドキュメンタリー映画『ムーランルージュの青春』が完成した。この映画から新宿の発展と芸能文化を振り返ってみたいと思う」とメッセージを寄せる。