新宿眼科画廊(新宿区新宿5、 TEL03-5285-8222)で6月8日より、パルコキノシタさんの個展「幽霊でもいいから」が開催される。
パルコさんは1965(昭和40)年徳島県生まれ。小中高の教職員を経てイラストレーターに転向。その後、月刊漫画誌「ガロ」で漫画家デビューを果たす。世界各地のアート展で絵を描いたり、ゲリラパフォーマンスを行ったりしている現代美術家でもある。同ギャラリーのディレクター、たなかちえこさんによれば、「現代美術の既成概念にとらわれず、柔軟に、かつ真摯(しんし)な姿勢で作品と対峙(たいじ)している点が魅力」という。個展は1999年以来の開催で、同ギャラリーでは初開催となる。
同展の根底には東日本大震災があるという。タイトルの「幽霊でもいいから」は「突然命を奪われた人々の魂だけでももう一度戻って来てほしい」という願いを込めた。パルコさんは「失った人が本当に大切な人だったら、たとえそれがどんな形であろうと、たとえ幽霊であっても会いたいはず、と思った」と話す。
今回は「津波に持って行かれたたくさんの命やものに対して、一言で言えない感情を表した」という平面作品15点を展示する。そのうちの多くのものが廃パネルを利用したもので、「材質からも再生やよみがえりが想起されるのでは」とパルコさん。ペインティングに使っている色調については、「震災の津波のビデオを見ていると、世界から色が消えて行く恐怖のようなものを感じたのもあり、世の中で色覚障害と呼ばれる人が感じる感覚に考慮した色づくりを意識した。色のバリアフリーという問題にも少し触れている」という。
8日にはライブペインティングや、パルコさんと美術ジャーナリストの新川貴詩さんによるトークショーも開催される。
たなかさんは「東日本大震災後、震災の写真展や震災を想起させるような展覧会は多数開催されているが、直接的な鎮魂を掲げた内容は少ない。震災をテーマにする事自体、賛否いろいろあるとは思うが、パルコキノシタの純粋な思いをぶつけた展覧会なので、ぜひ多くの方にお越しいただければ」と来場を呼び掛ける。
開催時間は12時~20時(最終日は17時まで)。入場無料。今月20日まで。