東京工芸大学の中野キャンパスにある「写大ギャラリー」(中野区本町2、TEL 03-3372-1321)で現在、「土門拳写真展『和(なごみ)』-古寺巡礼第五集より-」が開催されている。主催は東京工芸大学芸術学部。
土門拳は1909(明治42)年山形県生まれの写真家。1933(昭和8)年に営業写真館である宮内幸太郎写真場の内弟子となるが、報道写真家を目指し、翌年にはドイツから帰国した名取洋之助の設立した日本工房に入社し、対外宣伝誌「NIPPON」で数多くの撮影を手掛ける。
戦後は絶対非演出の「リアリズム写真」をカメラ雑誌などで提唱し、多くの写真家に影響を与えた。1958(昭和33)年「ヒロシマ」で国内外で高い評価を得、筑豊炭鉱地帯の悲惨な状況を取材した1960(昭和35)年出版の「筑豊のこどもたち」は10万部を超えるベストセラーに。その後、仏像や寺院、古陶磁などの伝統工芸品や風景など、一貫して日本の美を撮り続けた。1979(昭和54)年に脳血栓を起こして昏睡(こんすい)状態となり、その後目覚める事なく1990年に心不全のため死去。
「古寺巡礼」は、土門さんの晩年のライフワークといえる日本各地の古い寺院や仏像などを約15年かけて撮影した作品。1963(昭和38)年に第1集が完成。法隆寺から始まり、三十三間堂の撮影をもって、全5冊で撮影を終了し完結した。テキストも全て土門さん自身が書き下ろした。
古寺巡礼第五集に収録された寺院は、圓成寺、般若寺、三十三間堂、瑞泉寺、永保寺、西芳寺、大徳寺大仙院,妙喜庵待庵、龍安寺、瑞巌寺で、夢窓疎石の足跡が多く残されている寺院が収録されている。同展では、第5集より日本文化の「和」に注目し45点の作品で構成した。ギャラリースタッフは「鎌倉、室町、桃山時代の古寺にまつわる日本文化の『和』の心、穏やかさと優しさを見いだし、それをカメラに収めている。ぜひ実際にご覧いただき、その『心』を体感していただきたい」と来館を呼び掛ける。
開館時間は10時~19時。3月25日まで。